雨乞いの儀:アナザーストーリー(時系列2)
- DOYLE

- 2019年6月14日
- 読了時間: 2分
更新日:2019年6月15日
ドイルと別れたミコエルは、急ぎ天界へと戻ってきた。
「ミコエル様……少しよろしいでしょうか?」
「どうしたのです、まきエル。突然私を呼び出して。」
跪いている男は、まきの、ミコエルの従者である。
まきエルという名前はミコエルからもらったものだ。
「いえ、ミコエル様にお伝えしなければならないことがあり、お探ししておりました。」
「何事でしょう?」
ミコエルは大天使だ。
彼女が呼ばれる時、それは何か大きなことを行う時のみ。
「こるん様より、雨乞いの儀を執り行って頂きたいと進言がございます。」
「雨乞いの儀を?」
こるんというのは、ここ数年来『レミルメリカ』で活躍している吟遊詩人だと聞いている。
何でも『神に捧げる歌』を作成しているとかいないとか。
「はっ、現在、世界が慢性的な水不足になりつつあるとの報告があがっておりまして、それを憂いたこるん様が歌によりミコエル様に直談判を。」
つい思考が違う方向へ行くところだった。
「そういえば彼女は吟遊詩人でしたね。まさか私がいない間にそのようなことになっていようとは。わかりました。すぐに準備を致しましょう。」
「ありがたき幸せ。すでに由杞様にもご協力を要請してあります。」
由杞は、ミコエル教が祭事を執り行う際に使用する道具を作成する『道具師』である。
国から認めれ、現在では王家で使用する様々な生活や祭事の道具を手掛けている。
「由杞さんも雨乞いの儀に協力を?」
「左様でございます。微力ながら私、まきエルもお力添えを。と……ミコエル様、どちらへ。」
彼女とまきエルがいれば、準備は問題ないだろう。
「急ぎ、雨を望んでいる者たちもいるでしょう。すぐにでも儀を執り行います。」
「まもなく準備が整いますゆえ、もうしばらくお待ちを。こるん様にもお伝え致します。」
こうして、雨乞いの儀の準備は進められていった。
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「分かりました。まきエルさん、ミコエル様への進言、ありがとうございます。ええ、雨乞いの歌は私の方で。それでは。」
通信が切れる。
どうやらミコエルは雨乞いの儀を執り行うことを決めたらしい。
「うまくいった。これで私がミコエルに歌を作ったとなれば、私の名声はさらに上がる。そうだ、信徒の男共を使って、ミコエルと共に雨乞いを祈る歌にしてやりましょう。それがいいわ。」
すでに頭の中には楽譜ができつつある。
「でも、その歌を歌うのは私。ミコエルが祈り、私が歌う。そして、信徒たちは私の声に合わせて共に歌う。そう、すべての中心はこの私。吟遊詩人・こるん様の掌の上なのよ。」
この物語は誰も知らない。

(written by 立花いな実)
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