「たまにはこんな集まりもいいもんだなぁ、ひえ団長。」
kentaxと泡麦ひえ、2人の団長が夜道を歩く。
そして、すぐ後ろに続くのは外交官のm―aだ。
「団長殿、わりと飲んだんですから倒れないでくださいよ。」
どうやら、kentaxたちとどこかで酒を酌み交わしていたようだ。
「あの程度でふらつくほど、剣闘師団は甘くないでしょう。むしろm-aさんもご自分の足元に気を付けて。」
悠然と歩いているのはクリスエスである。
「皆さんと飲みに行ったのは初めてでしたが、楽しかったですよ。」
泡麦ひえは陽気に笑っている。
「しかし、酒場でもトカゲアザラゴンの話で持ちきりだったな。」
kentaxたちが飲んでいる時、偶然横にいて話をした建造士のはなぽも、トカゲアザラゴンの噂を聞いたと言っていた。
「しかし、あの話まで出回っているとは思いませんでしたな。」
m―aが言っているのは、図書館が襲撃された事件のことだ。
「夕立Pというスライム種が図書館に侵入したというあの話ですか?」
泡麦ひえも気になっていたようだ。
「噂に尾ひれがついたとも考えられるがな。マケッツの喜兵衛がいたなどと、俄かには信じられんよ。」
クリスエスが言うのも最もだ。
マケッツの1人がレミルメリカのしかも図書館を防衛するために動くとは考えにくい。
「あと気になってるのは、あれだな。ほら、魔王れんぷすの件だ。」
魔王れんぷす。
噂が噂を呼び、現存する最期の魔王とも呼ばれている。
kentaxが、しおまねきから情報を得たらしい。
「あの神々との戦争で生き残ったという魔王ですか?まさか、そんな者がレミルメリカにいるとは信じがたいことではありますが。」
泡麦ひえも半信半疑といった様子だ。
「そういえば、文月フミトさんからも、シルバーケープの件で連絡が来てましたね。」
外交官のm―aだけあって他国の情報には詳しい。
シルバーケープでは、つい先日、謎の魔力の奔流が計測された。
調査団からの連絡も曖昧で、現在は、るかなんPという人物が正式な調査に動いているらしい。
「どうなってるのかねえ、まったく。調査団は、『いな』がどうとか、『もん』がどうとか意味不明なことを繰り返してたらしいじゃねえか。」
kentaxはよく分からないといった様子だ。
「そうですね。私がその筋から聞いた話だと、『なみ』がどうとかと言っている者がいたそうですが。」
クリスエスも詳しいことは知らないらしい。
立花いな実、顧問Pを含めた四天王は、その存在すら噂の域を出ていない。
ゆえに、レミルメリカ全土でその名前は全く知られていない。
だからこそ、調査団のいう言葉が名前だという発想には至らない。
2人の団長とm―a、そしてクリスエスは、お互いに情報を共有しながら夜道を歩く。
その4人の様子を天界から見ている者がいた。
運営神・TOMOKI++、その人である。
運営神はこの世界の調停者の1人でもある。
定期的に地上を監視し、世のことわりを正す。
それが役割である。
運営神・TOMOKI++がこの4人を見たのはまったくの偶然である。
トカゲアザラゴン、夕立Pなど、多くの情報が飛び交っていたが、小さな話は気にしない。
神も人も多種族も、皆に平等に夜と朝は訪れる。
レミルメリカに暮らす多くの者たち。
運営神は彼らを静かに見守っている。