塔の国「プロムナード」:アナザーストーリー(時系列10)
- DOYLE

- 2019年6月15日
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セレスティアと海を挟んで反対側に位置するその国は、ミコエル教とは異なる思想が支配する地『プロムナード』。
その思想は、かつてレミルメリカで起こった大きな戦争を治めたとされる2体の精霊と、月と星を司る2体の女神を祀る思想。
この国では、各々が4体の神から祈りを捧げる対象を選択することが許されている。
互いにそれぞれの信仰を尊重する姿勢は、ミコエル教とは大きく異なっていた。
その信仰の寛容さゆえに、プロムナードはセレスティアに次ぐ勢力の国として栄えている。
国の中心にそびえ立つ「塔」を起点に、交通網が敷かれ、国中が繋がっている。
あらゆるところに工場が建ち並び、所狭しと高層ビルが立ち並ぶ。
プロムナードは、かつての戦争を勝ち残るため、国を挙げた機械化に取り組んだ。
その結果、国土の大きさでセレスティアに劣るものの、レミルメリカ最大の工業国となったのである。
だが、あらゆるものの機械化や工業の急速な発展は、プロムナードに住む人々の体に影響を及ぼした。
それが、健康被害だった。
様々な病原体により、他の国の者たちより平均寿命があまりにも短くなってしまった。
しかし、プロムナードの発展は止まらない。
この問題すら、機械の力で解決を試みた。
遺伝子操作による寿命の延長、身体機能の一部を機械化することによる健康維持、あらゆる試みが実施された。
当然、中にはスキルの力と魔法で、生き延びてきた者たちもいる。
だが、多くの者は機械がなければ、生きていけない。
それがプロムナードだ。
そして、今、このプロムナードを治める王は、塔の中から、街の様子を見下ろしていた。
「KAIさんからの報告では、セレスティアで雨乞いの儀が行われる予定だとか。経過はどうなっていますか、藤杜さん。」
藤杜錬。
王国の秘書官を務める男である。
生まれた場所はプロムナードであるが、長い間、プロムナードを離れており、その期間どこにいたのか?何をしていたのか?その多くが謎に包まれている。
数年前にふらりと国に戻ってきたところをKAIにスカウトされ、現在に至っている。
「別の筋から、雨乞いの歌が完成したという報告が上がってきましたので、KAIさんにもそのように伝えておきました。何かされるおつもりですか?」
プロムナードは水すら人工的に生成しているため、雨の有無で影響を受けることは少ない。
しかし、セレスティアはそうはいかない。
自然と共に生きるあの国は雨が降らなければ農作物が枯れてしまう。
「いいえ、特に何も。雨乞いの儀は数十年前に行われて以後、一度もなかったと聞いていますから興味もあります。」
プロムナードを治める若き王。
彼はそのスキルと知略で王の地位を築いた男である。
「儀式が成功すればミコエル教がさらに力をつけることにもなりかねません。」
藤杜の心配も最もだ。
「いえいえ、雨乞いをしようがしまいが、ミコエル教は強い。それは揺るぎませんから。それに私たちは勝ち負けを競っているのではありません。それに何にせよ、『ゆかいあは正義』。この変わることのない事実があるならば何の問題もないのです。」
なるほど、分からない。
藤杜は時々この王の言葉が理解できないことがある。
同じ精霊と女神を崇拝していても、王の思想はより深淵を覗いているのだろう。
「そうですか。それならば、次に我々はいかがしましょう?」
藤杜は秘書官として問う。
「KAIさんからの報告では、セレスティアはトカゲアザラゴンの討伐等で忙しい様子。私たちはその間に、例の件に対処しましょう。」
そういうと王は部屋を出て行くために歩き出した。
「例の暗黒大陸からの手紙ですね。まさか、あのような手紙を信じるので?」
藤杜はかなり複雑な顔をしている。
「以前の戦争以来、失われた大陸とばかり思っていましたが、まだあそこに国があったとは。しかし、使者もメッセージも使わず手紙のみを魔法で送ってくるとは予想外でしたね。」
暗黒大陸。失われた大陸。
かつての戦争の中心地であり、広大な土地が焦土となった場所。
人は住めないと神々すら手を出さなかった場所に何者かかいる。
王は決断を迫られていた。
宝塔。彼はもう一つの名を持つ者。
称号:キマシタワーP。
プロムナードの王にして、ゆかいあを統べる者である。
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