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動き出す闇:アナザーストーリー(時系列7)

  • 執筆者の写真: DOYLE
    DOYLE
  • 2019年6月15日
  • 読了時間: 3分

「ミコエル教の雨乞いの儀の曲の進捗はどうだ?」


男はメッセージで兵士からの報告を受ける。

どうやら曲は完成まではしばらくかかるようだ。


「ふむ、ご苦労。あまりに早いようなら俺のスキルを使っても良かったんだが。」


こるんもうまく時間をかけてくれているようだ。


「その様子だとまだ儀式までは時間がありそうですね。」


どこからか別の声が響く。


「報告ご苦労。」


メッセージを解除した。

周りを見ると、どうやら執務室のような場所だ。

部屋の真ん中に机があり、部屋の壁全体は本棚になっていて、所狭しと本が並んでいる。

別の声は部屋に入ってきた人物のものだった。


「闇姫P……何の用だ?いや、越黒リタと呼んだ方がいいのか? 」


「ここでは闇姫Pで通しておりますので、そちらでお呼びくださいな。それにしても、この間はミコエル教に手を出すのは早いと言いながら、きっちり情報を集めているとは相変わらず暗躍がお好きですね。」


闇姫Pは、黒い衣装に身を包んでいる。

こちらの世界ではゴスロリと呼ばれる服装に近いものだ。


「雨乞いの儀などに興味はないが、情報は力だからな。報告は定期的に受けている。お前こそ、学園の手続きは終わったのか?」


「終わりましたよ。ついでに、ある貴族の姫様が学園に来られるという噂を耳にして、あなたにお伝えしておこうと。」


闇姫Pは飄々としている。


「ほう?」


どうやら少しは興味をもたせることができる情報のようだ。


「噂はご存知ですか?あの獣の姫です。」


闇姫Pがにやりと笑う。


「かなりの跳ねっ返りで、姫として生まれながら森で獣を狩りながら過ごしていたと聞くが。まさか、親が痺れを切らしたか。」


関心のある話題ではあったようだ。


「ええ、その方です。親から学園に入り、人付き合いをするように言われたともっぱらの噂ですよ。」


「それで、闇姫P、お前がわざわざ例の学園に行くのはそれも理由か?」


「それもありますけれどね、この間、お話した転生者の件も気になりますし。」


転生者。闇姫Pはその言葉には相手が必ず反応すると分かっているようだった。


「学園に行くということは、転生者はセレスティアにいるようだな。やれやれ、もう少し近いところにいてくれれば手間もかからぬものを。それで?わざわざお前が来るのだから、何かあるのだろう?情報の対価に何を望む?」


闇姫Pの含みのある言い方に、本題を切り出すように促しているようだ。

闇姫Pもそれを感じたのか、少し声のトーンが落ちる。


「ええ、あなたのスキルを使って、例の学園を面白いことにしてほしいの。頼める?顧問Pさん。」


顧問Pは「ふぅ」とため息をつく。


「面倒だが仕方ない。転生者には俺も興味があるからな。その代わり、『どんな結果になるかまでは分からんぞ』。」


「あとのことはやっておくから御心配なく。それじゃあ、よろしく。」


闇姫Pは最初からそのつもりだったようだ。

闇姫Pの言葉に合わせて、顧問Pのスキルが発動する。


「さあ、どんな結果になるのか見せてもらおう。」


天使も神も知らぬところで、レミルメリカに蠢く闇が動き出した。

 
 
 

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